しばらく、日記を書くのを忘れてしまっていた。いけないいけない。
せっかくの再開だ、これからの学校生活を謳歌する為にも、
『此処に来るまでの自分』に関して、改めて列記しておこうと思う。
私は、東北の旧家に生まれた。峰と峰の間にぽっかり空いた谷の中、
一年中日陰に覆われる小さな村の長をやっていた家らしい。
でも、私が生まれた時には、すでに村は滅んでいて、日照の家の末裔だけがそこに棲んでいた。
そこで、私は育てられた。山に棲む、あらゆる怪異や異形を倒す為の存在として。
それに対して、何の疑問も感じはしなかった。
物心付く前から、戦い方を仕込まれ、何度も山に連れられ、『倒すべき敵』について学習させられる生活。
ただ、それだけを授けられていれば、疑問を持つ余地など端からないから。
そんな私が、『本』を通じて、少しずつそうでない世界を知り、
やがて学園に至るようになったのは、あるひとりの女性のおかげ。
そのことについては、おいおい、日記に記すことにしよう。
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