学園に入ってすぐ、『称号』を名乗れることを知った。
これは、見知らぬ生徒が私の名前と同時に目にするものだから、考えなくてはいけない。
「何か、目を引くような奇抜な名前がいいな」と思い、命名のヒントにでもならないだろうかと
学園で使用している『詠唱兵器一覧』を眺めていると、この文字が飛び込んできた。
『鉄球』
子供の頃、読んだ絵本の中に、たくさんの勇士たちがドラゴンに挑むお話があった。
その中のハイライトシーン、ドラゴンの王に挑む勇士たちの一人が持っていたのが、
とげとげの鉄球を鎖で繋いだモーニングスターだった。
さして、格好良く描かれていた訳でもないその勇士が、
それでも必死に戦っている様がその武器からは伝わってきていて、私はとても好きだった。
それで、私は迷いなく『鉄球姫』と称号を書き、学園に提出した。
そして後日、GTで鉄球を入手して、ひどく落胆することになる。
手に入れた鉄球は、黒くてピカピカ、トゲなんかひとつも付いていない、
砲丸投げに使うような正円の玉を模した詠唱兵器。
それがファイアフォックスの装備品だった。
はやとちりをした自分がとても情けなく、哀れな存在に思えた。
PR