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「サイキックハーツ」のプレイングノート。
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御門真綾に出会ったのは、学園に来てすぐ、それも、電車から降りた直後のことだ。
彼女は、駅のホームでおなかをすかせていた。
日が傾きかけるまで、電車に乗り続けることになるとは思っていなかったらしい。
私もそうだったのだが、お弁当を持ってきていたので、それを二人で分けて食べた。

彼女が「おいしいわね」と口の周りに御飯粒をつけながらいってくれたので、
その瞬間から、私たちは学園最初の友人になった。

彼女を「マーヤ」と呼び、彼女に「りくと」と呼ばれる。それだけのことがとても嬉しい。

そんな彼女は最近、土蜘蛛同士で作った新進の結社に属したようで、
楽しそうに忙しく飛び回っている。とても、よいことだ。

私も彼女も、ここで今、自分のやるべき事を探している。私たちなりに懸命に探している。
それに相応しい素敵な出会いが、私たち二人に訪れますように。
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ファイアフォックスは太陽と昼を司る力。ヴァンパイアは月と夜を司る力。
つまり、今、私の中には互いに相反する力が宿っていることになる。

ベースがファイアフォックスであることがはっきりしているから、
力がお互いを食い合うようなことにはならないのだろうけど、それでもやはり不思議な感覚だ。

昼には私の中の従属種ヴァンパイアが、やがて来る夜を求め、
夜には私の中のファイアフォックスが、昇る朝日を求める。

そう、つまりは――私の本能が常に、次の時間を、明日を求めている。ということだ。

ならば、この感覚は、今の私の中に常にくすぶるこの衝動は、
とても素晴らしいことなのかもしれない。

寝しなにそんなことを考えた為、筆を執った次第。
「夢をかなえよう」そう思って、屋上にのぼった。
鎖付きの棘鉄球はちゃんとあったのだ。『従属種ヴァンパイア』の装備品として。
アビリティをみても、本業であるファイアフォックスとの相性はいい。迷う要素はどこにもなかった。

屋上に行って、言われるがままに目をつぶると、冷たい液体を頭から振りかけられる。
この匂いは、血液。私が被ってきた血は常に生暖かい返り血ばかりだったので、少し新鮮だ。

そして、目を開ける。私は従属種ヴァンパイアの力を身につけていた。
その日の夜、さっそく「レベル33鎖付き棘鉄球」を装備し、裏庭で振るってみる。
自分の思ったところに、棘の鉄球が風を切り裂きながら、自在に飛んでいく。
鎖が「ジャッ」と鳴って、伸び切る瞬間がとても気に入る。

夢がかなったのは、これがはじめて。こんなに清清しいものかと思った。
学園に入ってすぐ、『称号』を名乗れることを知った。
これは、見知らぬ生徒が私の名前と同時に目にするものだから、考えなくてはいけない。

「何か、目を引くような奇抜な名前がいいな」と思い、命名のヒントにでもならないだろうかと
学園で使用している『詠唱兵器一覧』を眺めていると、この文字が飛び込んできた。

『鉄球』

子供の頃、読んだ絵本の中に、たくさんの勇士たちがドラゴンに挑むお話があった。
その中のハイライトシーン、ドラゴンの王に挑む勇士たちの一人が持っていたのが、
とげとげの鉄球を鎖で繋いだモーニングスターだった。
さして、格好良く描かれていた訳でもないその勇士が、
それでも必死に戦っている様がその武器からは伝わってきていて、私はとても好きだった。

それで、私は迷いなく『鉄球姫』と称号を書き、学園に提出した。
そして後日、GTで鉄球を入手して、ひどく落胆することになる。

手に入れた鉄球は、黒くてピカピカ、トゲなんかひとつも付いていない、
砲丸投げに使うような正円の玉を模した詠唱兵器。
それがファイアフォックスの装備品だった。
はやとちりをした自分がとても情けなく、哀れな存在に思えた。
編入してからは、結社に入ったりはしたものの、基本的にはGTに潜り続けていた。
でも、それでは学園に入る前と同じことだ。

ということで、依頼を受けた。「モーラット! モーラット!」だ。
私はこのモーラットという妖獣を見たことがなかったのだが、学園放送に写った、
この長い毛に覆われたつぶらな瞳の生き物がすっかり気に入ってしまった。
すごく、愛らしい。あの毛の中に手を入れたら、手はすっぽりおさまるのだろうか。
どんな手触りなのだろうか。と、いろいろ気持ちがぐるぐるしてしまい、依頼を受けてしまったのだ。
まあ、こんな始まりもいいのではないかと思う。

この依頼の結果に関しては、また少ししてから書くつもりだ。
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